會川昇「UN-GO 因果論」

UN−GO 因果論 (ハヤカワ文庫JA)

嘘つきだらけの世界でいまだ主人公は溺れているように見える。彼の――他人から見たらムダな努力、或いはバカな行為――足掻きは、所詮大きな渦の前では木っ端微塵に千切られて沈むだけだ。それでもその叫びが、足掻きが、報われる刹那があるかもしれない。否、報われずとも生きているなら、生きていかなければならない。たくさんの貌を見ながら、生きていかなければならない。足掻いて足掻いて、溺れ死ぬか、掻き切られるか、明日来るか、今日来るかもしれない、おしまいのその日まで。敗戦探偵・結城新十郎と探偵助手・因果、最初の事件。これはそんな物語。

TVシリーズはとりあえず終了し(…と言っておけば2期がちょっこしは近づくかもしれない)、DVD刊行中の「UN-GO」。そのTVアニメの前日譚として期間限定公開された劇場映画「UN-GO 因果論」のノベライズ。いやこれをノベライズというのは超絶失礼、これはれっきとした小説で、一個の確固たる物語なので、ノベライズとかいうの禁止。

小説は「日本人街の殺人」と「因果論」の二本立てから。「日本人街の殺人」は前日譚たる「因果論」の更に前日譚にして、「UN-GO」ワールドの新作。また「因果論」も新キャラは登場するし、因果という存在がなぜふたつの姿を持つのか、という点においては、映画版と全く異なりつつもより進化した(ついでにグロい)経緯が描かれていく。つまり映画を見た人も新しい「UN-GO」がもう一度楽しめる仕様。
ちなみに昨日発売された月刊「Newtype」で完結、今春コミックス刊行予定の會川昇脚本/paco作画・高河ゆん作画協力の「UN-GO」も「因果論」のストーリーだけど、こちらはこちらで映画とも小説とも違う「因果論」になってて、この「差異」或いは「ズレ」は明らかにワザとやっているのだと思うのだけれど、そういった「ズレ」を楽しむのもこのシリーズならではの醍醐味のひとつだなぁと。

発売当日に購入してその日の内に読破してもんどりかえりつつ、敢えてこの日に感想書いたのはワザとです。このワザと、の理由は読めばお察しいただける要素。
まあなんだかんだ偉そうに書きやがってますが、要は「すっげぇ面白いんで! 読んで! もーガンガン買え! それでガンガン増刷! よし2期決定!キャッホウ!」狙いの會川大ファンの戯言だよ。

4896106504UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)
會川昇 原案/ 坂口安吾「明治開化安吾捕物帖」
メディアパル 2012-04-10

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