「十三人の刺客」★★★★

決して気分爽快にはなれない話です。野郎どもの殆どは武士として生まれたからには武士の理念の如く死にたいという、一方通行の観念にどっぷり支配され、しかし本質的な部分が発する危機感に対し、ほんのちょっこしの勇気を発することにも躊躇ってしまう。
殿様ひどいと思うならもうブッ斬ってしまえばいいのに、グッと堪えてガマンしてしまう。死ねといわれて死んでいく。そこに美しさはカケラもなく、皆が泥まみれ血塗れになって死んでいく。泥の消費量もハンパない映画でした。

以下項目別感想。ネタバレとか考慮しません。

ゴローちゃん:本作で一番輝いていた人。刺客より輝いていたSMAPメンバーの一人。歌は歌わない。気楽なノリで来たSMAPファンをドン引きさせる悪行の数々に、映画好きは拍手喝采

ダルマ:ゴローちゃんの数々の悪行のひとつ。大変なインパクトでした。ビビった。

魚釣りの極意:劇中、松方弘樹の前で魚釣りの極意を説くシーンがあった。松方弘樹の前でそれはねぇ(笑)

落合宿:落合アトラクションと改名した方がいい。

内野聖陽:冒頭、W不倫+飲酒運転疑惑をわびて切腹。ちゃんと十文字に斬った。

役所広司:本作の主役。刺客たちのリーダー。上司に死ね! といわれて、ハイ! と答えちゃうタイプだが、裡にはそりゃ色々あるだろうなぁという部分が山田孝之とのやりとりに現れている。

山田孝之役所広司の甥っ子。ニート。叔父御の来訪からキナ臭い臭いを嗅ぎ取り、「武士としての死場を求めて」刺客に参加する、参加動機が一番不純な人。その不純のしっぺ返しをラストで喰らう、物語の狂言廻し。

松方弘樹:キャスティングした時、「この人だけで50人は倒せる」という事で、倒す人数が大幅増員された原因の人。その名に恥じぬ素晴らしい殺陣に観客は酔い痴れまくる。

伊原剛志役所広司家に居候していたニート剣豪。恩返しのためにたった一人の弟子を伴い刺客参加。

窪田正孝来世はアンダーアンカーエージェント。情報戦でセブンを活用して……ではなく、師匠と共に死地に赴く刺客最年少。出番や見せ場、カメラワークになんだか愛を感じるのはやっぱり来世のアンダーアンカーエージェントだからと思った。

波岡一喜:三池組常連でマサ同様、色々と愛を感じる。

伊勢谷友介:物語の中にあって物語の外にいる山の民(サンカ?)。興味本位で落合アトラクション決戦に参加するも……。

その他刺客の皆さん:13人もいると、キャラ的にどうでもいいような人も結構いるのだが、キャスティングは大変豪華ですし、それぞれきちんと見せ場はあった。

デスペラード:映画の主題歌のはずだが、映画では流れない。それでいいと思う。