「戦火の馬」★★★★


そのウマは決して人間の為にあるのではない。ウマがウマとして立っている。それだけだ。

そのあるがままの美しさを目にした人は大概が何かを感じ、ときに駆け、ときに自らの命を厭わず、国家も敵も味方も飛び越えて走らんとするウマが望む唯一のこと、帰郷の途を手助けする。
人間はかなしいことにクズでゲスでどうしようもない。21世紀を迎えて、その傾向は抑制されるどころか加速しているようにも見える。だが人間にはどうしようもない部分と同じくらい、美しいものを愛し、やさしいことを望む心が備わっており、それをただしく多くのことに発揮できるのならば、まだ人は良き方向へ行けるのではないか。そんなことを考えさせてくれる映画。劇場で大号泣してきた。
とはいいつつも、さすがスピルバーグ映画。騎兵の突撃とか戦場の泥沼とか、そういう話じゃないのについついワクワクしちゃうような戦闘描写満載。戦闘シーンの直接的な残虐描写は徹底的に排されているのに、残酷で容赦無く人を襲う死の描写も実にスタイリッシュ。


で、この映画には「SHERLOCK」で僕が心臓ブチ抜かれたベネディクト・カンバーバッチ(以下ベネさん)が出ているのだが、ベネさんはまあその……思ってたよりは短い登場時間じゃなかったけど(遠い目)。あとパンフに「SHERLOCK」の紹介がない! と一人キレた。ベネさんの乗ってるウマは、この映画の主人公ならぬ主ウマ公の友ウマとして、なかなか重要なウマ所だったです。

4566024180戦火の馬
マイケル モーパーゴ Michael Morpurgo
評論社 2011-12

by G-Tools