「大鹿村騒動記」★★★★★


物語はリニア新幹線の駅建設に沸く、ほどでもない村。
村人たちの最近の関心事はもっぱら歌舞伎。なにしろ300年続く、伝統の公演だ。本番は数日後。揉め事は歌舞伎の舞台に持ち込まないのが鉄則。
そんな折、かつて主人公(原田芳雄)の妻と駆け落ちした男(岸部一徳)が彼女(大楠道代)を伴い帰村する。
男は云う。「貴ちゃん、返しに来た」。女は惚けてしまっていたのだ。
怒りをぶつけるには年月が経ちすぎた。大体彼女はもう自分の事もわからない。覚えているのはかつて自分とペアで演じた歌舞伎の台詞だけ。
遣り場のない感情が彼の中にひたひたと積み重なっていく。
公演前日。偶然にも「あの日」のような大嵐。彼女は不意に我に帰り、嵐の中に飛び出していってしまう。
公演当日。そんな騒動のすべてを白粉と着物の裡に隠して、舞台が始まる―――――。

いやもう面白いので観てください! としか言えない。
終始一貫して傍若無人無双状態の原田芳雄が、つと見せる弱い貌、正気と無邪気の世界を行ったり来たりな大楠道代岸部一徳のケツ! 人々が抱えるちょっとした問題、ちょっとどころじゃない問題。日常の人生と舞台の上の芸能が交錯する刹那のカタルシス
よい映画を見るとすごく気持ちがイイネ! の典例のような映画でした。DVDもう出ちゃうけど、ギリギリで名画座で見れてほんとうに良かったです。 

余談。というわけでこの映画が2011年の映画賞で作品賞や主演男優賞を総ナメ中なのは全く当然の評価だと思うんですけれども、日本アカデミー賞の主演男優賞に芳雄ちゃんがノミネートされてる件については、ちょっと興味津津。これ授賞式どうするの? パネル? CG?

B005FTXVWU大鹿村騒動記【DVD】
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 2012-01-21

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