「仮面ライダー電王 俺、誕生!」★★☆


B000O76YYKデンライナーの車窓から 劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!メイキング
東映 2007-07-21

by G-Tools


 平成ライダー映画でお約束になっていたパラレル設定が撤収されたけど、物語の構造上、パラレルじゃないと辻褄が合わない箇所が、物語の肝の部分なので気になる。以下完全にネタバレなので、読みたくないぜ! って人はスルー気味で。




 本作においては「失われた記憶」を巡る物語でもある。野上姉弟の家族に関するエピソードは秀逸で、幼い頃に亡くなった両親が映る唯一の写真を失くしてしまった良太郎の後悔が、決して失われたものは戻らないけれど、ほんの少し救われて終了する。


 劇場版で登場する10年前の良太郎=小太郎。映画は小太郎のダイボウケンと呼んでも差し支えなく、色々な世界を旅し、最期に彼の心も救われるのだが、良太郎と彼がイコールのはずなのに、現在の良太郎は劇場版の出来事を何故覚えていないのか? 
 小太郎はパラレルワールドの良太郎で、今(テレビ版)の良太郎とは連続していないと考えるのが一番しっくり来る辻褄なんだけど、彼は時間軸の影響を受けない特異点という設定に矛盾。時間軸の影響を受けないという事は、パラレルワールドが存在しない筈。

 
 人の記憶が時間である、と桜井侑斗が口にする。中村優一ではない桜井侑斗が残した言葉、「過去が希望をくれる」といい、桜井侑斗が良太郎に与える影響は大きい。でも覚えていれば忘れないというなら、世界を消されてしまったハナの記憶はどうなったの? ハナも時間軸の影響を受けない特異点だから、彼女の記憶では失われた世界は再生されないのかもしれない。とすると前述の問題(良太郎=小太郎?)の矛盾にやっぱり行き当たってしまう。
 桜井は野上姉弟だけでなく、ハナとも関わりがある節がTV版であったので、そのあたりの事は今後の展開で解明されるのではないかと思うけど……例年それなりにしか謎解明されないので不安。


 平成ライダーお約束の裏切り者が本作では遂に消滅か!? と思ったら、リュウタロスが当たり前のように裏切ってた。そして当たり前のように元サヤ。


 例年と比較すると、こみいった設定と冒険ロケに時間を割きすぎたのか、アクション面の見せ場はそれほどなし。TV版では、電王に変身してからはモモタロスを演じる高岩氏の独壇場状態なので、劇場版においては、イマジンズのスーツアクターアクションが見せ場なのかもしれない。
 実体化したモモタロスが武器として大刀を振り回すも、彼の性格から刀を振り回すことさえ面倒くさくなって、すぐに武器を捨てて戦うのに笑った。あと生身戦闘において、良太郎よりハナたんの方が全然強いって……。


 恒例の平成ライダーゲストは「カブト」の山口祥行と「響鬼」の川口真五。川口氏がモモタロスを見て「鬼だー!」と叫んだのにはニヤリ。そういえば劇場版「響鬼」と同時代なんだよね……。ほか、声優として、徳山秀典内山眞人萩野崇の白倉Pつながりゲスト、ボウケンブラック・斎藤ヤスカが参加するも、徳山さん以外、やられ声しか聞き取れなかった……。


 上映時間66分。多分来年確実にディレクターズカット版が出ますね。ディレクターズカット版にはTV本編のハイライトも収録しないと、ジーク登場の顛末とか全くわからないような気がする。
 TV版とリアルタイム連動という企画はアイデアとしてよかったけど、肝心の劇場版の尺がカットされてるのは本末転倒じゃないでしょうか。ゲキレンジャーとあわせて90分ちょいが子供が鑑賞に耐えられる限界なんだろうと、制作側に決め付けられちゃってる気がする。子供なんてつまらなかったら速攻退出するぜ! 大人だってつまらなかったら速攻退出するぞ! 面白ければ300分だって見てるんだ!  というわけで、80分ぐらいでスッキリ納得できるものを作れそうなんだから、頑張って欲しいと思います。